一章 事件の始まりは薄紅色

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百合川の蔵橋付近の公園の遊歩道は、綺麗に整備されて、早朝に走りに来るランナーや散歩する老人などに人気がる。 そのランニングコースは河川敷から公園内を走る5キロほどのコースになっていて、三十路近くのOL三島香は、毎日のようにここを走っていた。 早朝、いつものように河川敷を気持ちよく走っていた香は、不意に川の方を見やる。いつも見ている風景に何か違和感を感じる。よく見てみると、川の隅に何やら浮かんでいる。 なぜか気になり、河川敷を降りて、近づいて見てみる。そしてそれが何かわかった時には激しく後悔する。香は驚きと恐怖によってその場に倒れこんでしまった。それは明らかに人の形をしていたから。 早朝の静かな川辺は多数の警察関係者によって騒がしく賑わいでいる。川で発見された遺体は見識が一通り調べると、ブルーシートに隠され。何人もの人により運び出されていく。遺体の発見された周辺は規制線が貼られ、出入りを制限される。 警察関係者が騒がしくそれらの作業をする中、周りには野次馬や報道陣が集まり始めていた。 他の報道陣に比べて少し遅れてきた祐樹は、現場を取り巻く報道陣の中に馴染みの顔を見つけ、情報収集の為に声を掛ける。 「中尾さん、おはようございます」 「おっ祐樹くん。宮間さんは一緒じゃないのかい?」 「はい。今日から独り立ちです」 「ほう。だからいい顔をしてるんだね。まー頑張りなさい」 中尾さんは大手の新京新聞のベテラン記者である。私に仕事を教えてくれた先輩、宮間さんの昔馴染みで何度か取材で会って話をしている。情報通で警察関係にもかなり顔が聞く。 「中尾さん。仏さん中学生だって話ですけど本当ですか?」 「うん。私もそう聞いているよ」 「事件ですか事故ですか?」 「そこまでの情報はまだ出てきてないよ。今の状況だと、どちらとも言えないみたいだね」 「そうですか・・・」 これ以上は情報を聞き出せそうにないので、とりあえず現場の写真を抑えることにした。 俺は周辺の写真を何枚か撮ると、できるだけ現場に近づき、望遠で死体が発見された周辺を写真で収め始めた。 すると、覗いていたファインダーに場違いな人物が入り込んでくる。 それはブレザーの制服を着て、カバンを脇に抱えた、栗色の髪の女子高生だった。
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