一章 事件の始まりは薄紅色

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規制線で入れないはずのその現場に、少女は躊躇することなく、川辺を散歩するように自然と近づいていく。周りの人間も、少女があまりにも自然体の為か、誰も止めようともしない。 死体発見現場に立った少女は、そこで何かを見ている。じっと俺には見えない何かを、集中して見ているように感じる。 「き・・君そこで何やっているの!入ってきちゃダメだよ!」 さすがに警察の人に気づかれたようだ。少女はその場から追い出される。 追い出された少女は何事もなかったように、蔵橋の方へと歩いていく。 その堂々とした姿に、なんとも気になってしまった俺は、その少女を追いかけた。 少女は蔵橋までくると、脇にある階段で河川まで降りていく。 キョロキョロと周りを見ながら、少女は橋の下まで来ると、そこで川の方をじっと見つめ始める。 何をやっているのかはわからないけど、それを少し後ろから見ながら、俺は声をかけるタイミングを計る。 しばらく川を見ていた少女は唐突に振り返り、後ろで見ていた俺と目が合う。振り返るタイミングを全く予測できなかった俺は、その場でフリーズしてしまった。 そのままじっと見つめた少女は、一言呟くように喋る。透き通った綺麗な声が響く。 「すごいよあなた。綺麗なピンク色なのね。そんなに綺麗なのは初めて見たよ」 「なぁ!何の色が?」 な・・何を見られたのかよくわからないけど・・すごく恥ずかしい。 「ピンク色の人に悪い人はいないから」 褒められているのかな?よくはわからないけど好感を持ってくれているみたいだ。 「ちょっと聞いていいかな?」 少女は無邪気な笑顔であっけらかんと鋭く返事をしてくれる。 「何でも聞いてくれ!」 「さっきは事件現場で何をやっていたの?何かを見てるようだったけど・・」 「色を見ていたの。でもあそこの色は薄くてよく見えなかった」 「色が薄い?」 「そう。色が薄いの。だから死んだのはあそこじゃないよ。死んだ場所には濃い色が残るから」 この子は何を言っているんだろうか。イマイチ理解できない。死体はあの場所まで流されたって言いたいのかな・・その可能性は十分あるだろうけど・・
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