6人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから私は転々とこびりついた色を追ってここにきたの」
「え!どうゆうこと?ここが死亡した現場って君は言いたいのかい?」
「ここが死亡した場所だって、私は言っています」
堂々と胸を張って彼女は言い切った。そしてくるりと回って振り向くと、川のある場所を指さして。
「正確にはあの場所です。あそこで亡くなっています」
彼女の指さした場所は、比較的浅い場所で、流れも遅く、人が簡単に溺死するような場所には見えなかった。
彼女の言っていることが本当なら、今回の事は事件性が強くなる。最近、雨などは降っていないので、一時的に増水したとも思えない。あそこで死亡したとすると事故や自殺とは考え難い。
なんだけど、適当なこと言ってるんだろうなこの子。あまり相手にしないほうがいいのかな・・
「あーーー!信じてませんね!紫色がにじみ出てきました」
「ええ?」
「紫は疑いの色です。あなたは私を疑っています!」
「いや・・確かにそんな話し信じてないよ。そりゃー初対面の女子高生に、色が云々言われても、なかなか理解できないよ」
彼女はそれを聞くと、腕を組み。うんうん頷きながら話し出す。
「なるほど。素直な意見ですね。では納得できる話をしましょう!」
そう言うと彼女は俺に近づき、手を口に添えて、ボソッと内緒話をするように意味不明の一言を囁く。
「私・・・実は天使なんです」
きゃー言っちゃった!みたいな感じで手で顔を覆い、彼女はキャピキャピまわりだした。
俺は悟りを開いた高僧のごとく無の境地で、彼女の囁きを完全に無視すると、帰るために階段を上ろうとした。
しかしガシッと腕を掴まれてそれを阻まれる。
「紫色が濃くなっています!どうしてですか!」
「そんなもん当たり前だろうが!なんだよ天使って!」
「しょうがないじゃないですか!天使なんですから。私はだから生と死の色が見えるんです」
俺は彼女の両肩をガッと掴み、目をじっと見つめると無表情にこう言い放った。
「わかった!君の言いたいことは十分理解した。天使ちゃん。俺は忙しいんだ、そろそろ帰らせてもらうよ」
最初のコメントを投稿しよう!