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うちには猫がいる。
肌寒い秋の始まりに、拾ったオス。
細くて軽くて、華奢。
ビー玉みたいな綺麗な瞳。
普段はにゃーと鳴かない。
窓の外は冷たい風と、冷えきった空気を温める太陽が顔を覗かせていた。
「名前は?」
胸の上にすり寄る猫にたずねる。
「名前……つけて」
あまえた瞳と、しぐさがこれほどまでに可愛くて。
「そうだな……」
湿った黒髪を撫で、頬を指でなぞり、薄い唇をこじあける。
「たま」
キラリと猫は瞳を輝かせた。
「こっちのたま?」
「俺の下半身に手を伸ばすのをやめろ」
そうじゃない。もう出ない。
「ビー玉みたいなのと、猫みたいだから」
片手で髪をかきあげ、体を起こす。
節々が小さく悲鳴をあげた。
ころんと俺の胸から落ちた猫がシーツに頬を寄せ、俺を見上げる。
「ダメか? たま」
一夜限りの交わり、そうだろ?
夢みたいなもので、ただ明日の洗濯物が多いだけ。
猫は俺の手にすり寄り、鳴いた。
「にゃん」
「……はっくしょい!」
くそ、やっぱり風邪ひいた。
*end*
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