子守唄

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ギター片手に弾き語り。 立ち止まって聴いてくれる人は僅かで、無駄な時間を過ごしてるのかと思う事もある。 好きな事で生きていきたいと、大学を辞め、実家も出た。 バイトしながらギターを買う金を貯め、中古の楽譜を買う。一週間前にやっとギターを買ったんだ。 それまでは狭いアパートの部屋でエアギターしてた。虚しかった、でもこれからは違う。 アパートは楽器厳禁で、少しでも音を鳴らそうものなら管理人さんが飛んできてドアを叩く。 管理人さんには是非、ドラムを叩いてもらいたい。 アパートは駅裏に程近く、地下道がある。声も音も響いて俺には最適の空間だった。 深夜なら人はほとんど来ない。練習できる。 人が来ないという事は聴いてくれる人もいないという事で、つまりはやっぱりエアギターと変わらないのかもしれない。 歌い終わった曲の最後でおまけにギターを鳴らし、一息。 そこに、パチパチとわざとらしい拍手がなった。 地下道の真ん中で歌っていた俺からは、薄暗くてよく見えない。 入口か出口のそばに、黒い塊がいた。 まるで野良猫にでも見られていたような、妙な気恥ずかしさがあった。
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