子守唄

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少しだるそうな動きでうずくまっていた状態から立ち上がったシルエットは細く、ゆらゆらと揺れる猫の尻尾みたいだ。 髪が長めで、性別の判断がつかない。 「おにーさん、おつかれ?」 男性の声だが少し高めかな。後ろ手に組んでいるのか細い体が余計に細く見える。 「まだ一曲目だから、それほどじゃないっすよ。拍手、どーも」 ペコリと頭をさげてパフォーマンス。聴いてくれる人が少なく、まして拍手をもらう事もあまりないのでし慣れない。 細い男は地下道にその声を小さく響かせた。 「おにーさん、あんまり歌、上手くないね」 絶句した。 お辞儀でさげた頭をあげなきゃよかった。コイツはキラキラ光る瞳を細めて、楽しそうに笑っていたからだ。 「ねぇ、おにーさん。どの辺に住んでるの?」 「はい?」 脈絡というものを知らないのか、コイツ。何を期待してるのか、その笑みは俺に何かを求めていた。 「なにか食べるものない? お腹すいちゃって」 後ろ手にしたまま、ひょいひょいと俺のポケットや手元を見たがる。やめろよ、初対面だろ、友達でもしねぇよ、こんな事。 「……部屋、行けば菓子くらいなら、ある」
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