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「愛してるって、言って?」
わかってる、答えはわかってる。
でも。なんだろうね、やっぱり呪われたよカオル。君に。
誰かに愛してほしいと、思ってしまう。
たった一人の、誰かに。
「香夜、私はあなたを大事にしたい」
「愛してはくれない?」
「……大切、なんです」
服を畳んでベッドに置くウメちゃん。これから着るのに、几帳面。
「無茶な仕事は、割ってでもやめさせます。あなたがいるところなら、どこへでも迎えに行く」
「愛してはくれないの?」
「……カオル、だけです」
ウメちゃんは、右手を固く握った。
ノックも固いし、刈り上げた短髪もワックスでカチカチ。
でもウメちゃんの心が一番、固いみたい。
「シャワーするから、待ってて」
「はい」
「覗いてもいいんだからね?」
「いえ、それは」
「ばか真面目」
「そうやって、生きてます」
おれはバスルームに入った。
カオル、おれこの指輪大事にする。
カオルが求めた愛を、カオルに見せてあげる。
指輪の裏側を見てみた。
二人のイニシャルと、愛してるの文字が、暖かかった。
*end*
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