エピローグ

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 研究室で大瀬はモノブチの毛をブラッシングしていた。 「すっかり毛もヒゲも生えそろったな」 「ニャー」  モノブチは目を細めて気持ちよさそうにしている。   宇谷は亜々沙の墓参りにいくと休んでいる。だから研究室には大瀬とモノブチだけ。  秘書も三上愛がいなくなってからは雇っていないので、大瀬は自分でコーヒーを淹れ、かかってきた電話に対応しなければならない。  あれから警察が調べたところ、やはり焼死体はいなくなった生徒の一人若槻暁雄と判明した。  2名の生徒の行方は今でも分からずじまい。  そして一番の謎が楢橋志文の正体だが、卒業証明書や教員免許を調べるとすべて偽造だった。  楢橋志文という人物も見つからないため、偽名と判明した。  結局何者だったのだろうか。  恩田敏は女子トイレにいた証拠も、亜々沙に触れた証拠も見つからず、証拠不十分で釈放された。  本人の証言では、校内の見回りをしていたら、いきなり自分と同じ髪型、メガネ、灰色の服を着た男に突き飛ばされたということだ。  その男はのっぺらぼうのマスクで頭をすっぽりと隠していたため、人相は分からなかったらしい。  大瀬はそれが楢橋で、最初から恩田を疑わせようと変装していたのではないかと思った。  こうして亜々沙を殺した犯人も捕まらないまま、お葬式が終わって納骨されている。  温室から大量にジャコウアゲハが逃げていたのは、火が出る前に窓や扉が開いていたからで、犯人はあらかじめジャコウアゲハを煙で死なさないようにしたのだと推察される。  つまり楢橋志文はジャコウアゲハが大好きな不詳の殺人鬼だったということだ。  そこで警察ではあいつに『ジャコウアゲハ』という呼び名をつけたらしい。  いつか『ジャコウアゲハ』が捕まれば、何があったのか分かるのだろうか?
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