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「先生! 伊久見先生!」
研究室に駆け込む、跳ね返りヘアで大きなメガネをかけた青年宇谷(うや)。
伊久見先生と呼ばれた男は、文化人類医科大学病院の脳疾患研究所に研究室を構えている伊久見燎医学博士のことである。
宇谷は彼の助手だ。
「どうしたんだい? 牛乳瓶の底メガネが愛らしい万年寝癖の宇谷君」
「これは天然パーマです! 分かっているくせに! そんなことより相談があります!」
「どんな?」
「実は……」
宇谷が厚レンズのメガネの中心をクイッと人差し指で押すと、両目のレンズがキラリと光を反射した。
「僕の女友達が高校で養護教諭をしているんですけど、そこで生徒たちが次々と消えていると言うんです」
「次々と? それで?」
「彼女からその解決を相談されて、僕も先生に相談してみると言ってしまいました」
「どうして私になるんだ?」
「だって先生は見事にあの猟奇殺人事件、『脳みそ消失事件』を解決したじゃないですか」(作者より:詳しくは猟奇ホラー『猿を食す』をお読みください)
「人間消失事件……、脳みそ消失事件……。ハッ、ハアッ。確かに似ているなあ」
大瀬は椅子に座り直して大きな背もたれを背中で押しながら苦笑すると、からだを再び起こして指摘した。
「宇谷君、それは警察に相談すべきだろ」
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