2.ジャコウアゲハ

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 私立221学園は東京奥地の山間部に置かれた高校だ。  里山に囲まれた敷地のために全体的に湿気が多く、薄い靄(もや)に包まれている。  近づくと不快な空気がジトリと体に絡みつく。  爽やかな深緑に囲まれているのに、曇り空から差し込む日差しが弱弱しくて古びた校舎はどんよりとくすみ、近づくものの気分を暗くさせる。  門のところで伊久見は学園名を読んだ。 「『私立221学園』って、変わったネーミングだな。どんな由来があるんだ?」 「横に記念石碑がありますよ。えーと、『221は創設者の誕生日2月21日に由来する』って書かれていますね」 「知ってみると単純だったな」  二人は門横にある受付で養護教諭に連絡を取ってもらい、許可されて直接行くように言われた。 「この学校は土足のままでいいみたいですよ」  校舎に入り、配置図をみて養護室へ行くと、白衣の若き美女がいた。 「こんにちはー」  宇谷が明るく挨拶したから、この人がそうなのだろう。  透明で大きな瞳の優しい笑顔。滑らかで白く輝く肌。華奢な体。頬にかかる柔らかく巻かれた黒髪が、肌の白さを引き立たせている。
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