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「深夜美月のCD、いっぱいあるッスねー! 俺、聴いた事ないんスよ。いいッスか?」
「凄くいいよ、特に最後に発売されたシングル、ノクターンはいいよ。好きな人の事を思い出して、勝手に涙が出て来るくらいだよ。」
「社長、聞きながら好きな人を思って泣いたんスかー?」
「ちょっと、だけだよ」
「やっぱ、好きな人いるんスね。顔、赤くして可愛いッス」
もう……。
アルバイトがその時、美月のノクターンのCDを勝手にパソコンに入れて再生した。
聞こえてくるのは深遠なる歌姫の吐息。
僕はホテルの隣の部屋から聞こえてきた、ノクターンを歌う美月の声を思い出した。
消え入る様に、囁く様な、儚いメロディー。風に吹かれた水面のように聴いた者の魂を揺らめかせる。
一瞬で恋する人への心を思い出させる、切ないノクターン。
僕がファントムを思ったように、あの時、深夜美月は元恋人を思って歌っていたんだろうか。
黙秘を続ける美月にとって、元恋人への思いもまた、頑丈な鉄の箱に閉じ込めた大切な秘密なのかも知れない。
第3話 美しい月の夜想曲/END
【次回予告】「第4話 怪盗エイプリルフール」少年小林と怪盗ファントムがデート?からの~、ミステリー?そしてクソエロ!!公開前に運営から6回程怒られました☆
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