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「本日、ルビーを頂戴する。怪盗ファントム……って、なんだこりゃ」
兄さんが封筒に入っていた手紙を見て言った。
「えっ?!」
朝食を食べていた僕は驚いて箸と茶碗を派手にテーブルに落とす。
危なく茶碗を割る所だった。
テーブルの向かいに座っている兄さんが、湯呑みに入った日本茶を飲みながら呑気に言う。
「うちにルビーなんてないもんな! それとも形見にあったっけ?」
「ないよ!」
僕は即座に答えた。
「だよな。いたずらだ。ウチに、あの怪盗ファントムが盗むようなモノはないからな。エイプリルフールのくだらないイタズラだ」
兄さんは、そう言って手紙と封筒をグシャッと丸めてゴミ箱に入れ、立ち上がる。
「じゃあ、そろそろ出勤! 行ってきます! シャー!」
謎の雄叫びを上げ、朝から元気で馬鹿っぼい兄さんが家を出るのを見届けると、僕はあわててリビングルーム兼ダイニングルームに戻り、ゴミ箱から手紙と封筒を拾った。
グシャグシャになった手紙をテーブルに広げる。
光沢のある白い封筒の表には僕と兄さんの名が印刷されていた。
これはいたずらなんかじゃない、ファントムからの予告状だ! 僕をハッカーのルビーだと知っているのはファントムしかいないんだから。
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