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「兄さん?」
「君、葵の彼女でしょ? あいつ、小さい頃から女の子に興味なくて、男のケツばっかり追いかけてて心配だったんだけど、良かった、良かったぁ!」
「兄さん、僕だってば! 葵だよ」
僕は兄さんに近寄って顔をよく見せた。
「えっ、葵!?」
「兄さん、僕、シアターに潜り込むよ。何とかしてみせる」
「お前、やっぱりそういう趣味があったのかぁーーー!!」
兄さんは泣いていた。鬱陶しい兄だ。
★★★
場所は都内の古い巨大なシアター。
僕の仕事はチケットのもぎり。それと、お芝居が始まったら、観客席の後ろに立ち、災害など何かあった時の避難誘導補佐をするように任された。
舞台の裏方に配属されたら何か出来るような気がしたのだけれど、仕方ない。
もぎりをしていると兄さんが観客を装って入場していった。恐らく複数の刑事が観客を装って入場しているのだろう。
延々とチケットのもぎりをしていると、マスクをした大柄な中年女性が僕を見て、「まぁ、お人形みたいに綺麗な女の子ね」と言ってチケットを渡して来た。
チケットをもぎり、ニッコリして半券を渡し返そうとした瞬間、僕の穿いているスカートが両手で思いっきりまくられた。
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