第1話 怪盗ファントム、現る!!

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拍手喝采の中、お芝居は無事終了し、アルバイトの時間が終わると僕はシアターを出た。 僕は刑事ではないから、兄さんの捜査には加われない。だから家に帰るしかない。 冬の空気は冷たく、素敵なお芝居で熱く満たされていた心も、あっと言う間に冷めたくした。 肩を縮こめて帰り道を歩いていると、兄さんからスマホに電話がかかってきて、今夜は泊まり込んで指輪の警備をするとの事だった。 結局、僕は何にも出来なかったし、この夜も、この先も、何も出来ないんだろうと思うと無力感でいっぱいになった。 何だか気が抜けてしまった。 電車を乗り継いで家に着くと、コートとスーツをリビングルームにだらしなく脱ぎ散らかし、ワイシャツと下着1枚になる。 ウィッグとメガネを取り、カラーコンタクトと、つけまつげを外し、洗面台で顔を洗って、コンビニで買ったお弁当を食べながらテレビを観た。 正しく言えば観たと言うより、ただテレビをつけてボンヤリしていただけだった。 1時間ほどして僕は2階から話し声のようなものが聞こえて来る事に気づく。 この家には今、僕しか居ないのに。
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