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部屋を出て恐る恐る階段を上がってゆく内に、それが男のあえぎ声だと解った。
2階の廊下、突き当たりにある僕の部屋に駆け寄ってドアを開けると電気の消えた部屋にパソコンの電源だけがつけられ、そこから男同士のあえぎ声が聞こえて来るのだった。
「プライバシーの侵害だと言っているだろう! ファントム!!」
僕は顔を熱くして窓の方を見て叫んだ。
窓に腰掛けた人影からクスクスと笑う声がする。
僕は慌ててパソコンのエロ動画を閉じた。この前、ファントムにフォルダを開けられたのでセキュリティをより厳重にしていたのに、またやられのだ。
「君は非常に耳がいいのかな。仕掛けたらすぐに部屋に来た」
「地獄耳なもので。で、指輪は、もう奪ったんですか?」
振り向いて僕は人影に話かけた。
「いや、まだだよ。今日は1日、君に見惚れていたんだ。ああいうのもいいね」
「シアターで僕のスカートめくったの、あなたでしょ」
「そうだよ。私は鼻がいいんだよ。匂いで君だとすぐに解ったよ」
ファントムは超能力とも言えるほどに鼻がいいらしい。
女装は無駄な努力だったのだ。
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