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「指輪はいつ奪うんですか?」
「いつにしようかね。公演最終日にすれば、それまで美しい女の子の格好をした君をずっと見られるのかな?」
「変態」
「君こそ何て格好をしているんだ。変態の餌食になりたいのか」
そう言われて僕は自分がワイシャツと下着姿でいた事を思い出し、急に恥ずかしくなり、伸びる訳じゃないけれど、ワイシャツの裾を両手で下に引っ張った。
「別に自分ちでどんな格好したっていいでしょ」
「それはそうだが目の毒だね」
「ファントムって、男が好きなんですか?」
「私は美しいものが好きなんだ」
「そう、ですか」
と、言う事は、ファントムはバイセクシャルなのだろうか。あまり興味はないからどうでもいいけれど。
「指輪の話に戻るが、今日舞台で使われていた指輪は残念ながら偽物だ。君は知っていたかい?」
「偽物?」
兄さんから、そんな事は聞かされていなかった。まぁ、僕は警察の人間でもなんでもないから当然と言えば、当然なんだけれど。
「どうせ偽物でも客席からは解らないのだから、奪われる危険がありそうな場所には置かず、最初から安心な場所に保管しておこうという訳だ」
ファントムは忌々しそうに説明した。
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