第1話 怪盗ファントム、現る!!

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「嘘じゃないさ」 僕は自分の激しくなる心臓の音を感じながら、警戒しつつ、少しずつ人影に近付いて行った。 「ははっ、君は勇気があるな。いいぞ」 ファントムが楽しそうに笑って言った。 月の薄明かりが窓の外から入って、ファントムのシルエットを浮かび上がらせている。 身体にアスリートが練習着に着るようなタイトな黒の上下を着け、黒い手袋を着けている事は解るが顔は見えない。 「よく見えない……」 「では、もっと近くにおいで」 僕はベッドの上に乗り、四つん這いになって、窓辺に座るファントムにじわじわと近付いた。 手を伸ばせば掴めるくらいの距離で、僕は月明かりに浮かぶファントムの顔を見た。 黒髪のオールバックに、強い意志を感じさせる黒く澄んだ瞳、鼻筋の通った形の良い鼻、鼻の下に整えられた髭、キュッと引き締まった唇。20代後半に見える綺麗な青年の顔があった。 ハッとして息を飲む。きっと僕は今、顔を赤くしている。
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