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「君の美しい顔をもっと近くで見たい。君も私の顔をよく見るといいよ。さぁ、もっと近くにおいで」
僕は膝で立って近寄り、更に顔を近づける。その瞬間、ファントムに肩を両手で掴まれた。
「!!」
引き寄せられて、ファントムと僕の唇が重なる。唇に熱く柔らかい感触があった。
「んっ!!」
唇を合わせるキスなんてした事がなかった。だから気が動転した。
「ここは何もない家かと思っていたら、とんでもない宝があったよ」
ファントムは子供が笑うように、無邪気な感じで笑った。
「なっ、何を……」
「君を気に入ったんだ。明日、また劇場で会おう」
そう言って、ファントムは僕に背中を向け、窓から庭にヒラリと飛び降りた。
僕は窓から身を乗り出して、ファントムの姿が消えるのを確認すると、身体中を熱くし、ベッドに茫然として座り込んだ。
★★★
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