第1話 怪盗ファントム、現る!!

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正気を取り戻した僕は兄さんに慌てて電話をかける。 明日ファントムがシアターに現れるだろう事と、ファントムの素顔を見た事を告げると、僕の記憶を元にファントムの似顔絵を作ろうと言われた。 しかし、それが指名手配書になる事はないとも言われた。僕の見た人物がファントムなのか確証がないから、らしかった。 また狼少年扱いされたような気がして不愉快な気分だ。 「なぁ、ファントムは何でお前の部屋に現れるんだ?」 兄さんが電話の向こうで聞いてきた。 「僕だって知らないよ!」 僕は怒って電話を切る。 もしかして兄さんは疑っているのか。いや、そんな訳はない。僕の事を信じてくれているハズだ。でも、信じてくれるのは兄さんだけだろう。他の警察の人間は僕の言う事なんか信じないだろう。僕はただの狼少年なんだ。 そうだ、ファントムだって、シアターじゃない所に指輪があるのが解ってるなら、シアターに来る必要がないのに、何で劇場で会おうなんて言ったんだろう。 「あーーーー、もうっ!」 2階の部屋に戻った僕はベッドの上でうずくまり、叫びながら、拳でベッドをバンバン叩いた。 気が済むまで叩くと、一息つき冷静になる。 そして起き上がってベッドを降りると、勉強机の奥から特注のナイフを取り出して部屋の端まで下がり、ダーツの的と向き合い、狙いを定め、思いきりナイフを投げた。 真ん中にドンッと重い音を立てて命中する。 「よしっ」 僕は小さく呟いた。 ★★★
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