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翌日、僕は学校を休んでシアターに向かった。
もちろん女装をしている。下着を女性物にした方がいいのか一瞬迷ったけれど、自分の下着を穿いて行った。
ファントムめ、スカートめくりなんて今日は許さないからな。
色んな意味で警戒しながら、アルバイトの仕事に就いたが、怪しい人物にも出会わず、もぎりを終えてホールに入る。
客席を見回すと通路際、右端の席に兄さんの姿を見つけた。
刑事達はどういう配置になってるんだろう。
指輪を別の所に保管しているなら、警備は手薄だろうか。
気にはなったが、部外者の僕に、兄さんも教えてくれる事はないだろうと思い、聞かなかった。
クリスティーヌ役は偽物を身に付けているから指輪は奪われないだろうが、きのう何故かファントムは僕に劇場で会おうと言った。
きっとファントムは現れる。
まぁ、ホール内で何か起きても僕には何も出来そうにないんだけれど。
やがて場内は暗くなり、幕が開く。
お芝居が始まると、きのうと同じように僕はまた舞台に見惚れた。
きのう観たので、ストーリーはもちろん、役者の動きや、セリフなどは全て頭に入っている。
オペラ座の怪人を演じる役者が歌うシーンが来ると、待ってました!と心の中で声を上げた。
本当に聞き惚れてしまう。
子供の僕が言うなという感じだが、官能的とでも言ったらいいのか、それはきのうよりも、いっそう艶やかでゾクゾクする歌声だった。
しかし、ふと、僕は小さな違和感を覚える。
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