第1話 怪盗ファントム、現る!!

35/44
前へ
/223ページ
次へ
オペラ座の怪人役がクリスティーヌ役から指輪を奪った瞬間、舞台の両袖から、刑事らしき人物が1人づつ飛び出して、オペラ座の怪人役に向かって行った。 観客達がザワつき出す。 オペラ座の怪人役、いや、ファントムは2人をヒラリとかわし、1人の顔面に強烈なパンチを食らわせ、もう1人の横っ面に華麗な回し蹴りを食らわせ、2人を簡単に倒してしまうと舞台の左袖に走った。 「待てっ! ファントム!!」 僕は舞台によじ登り、ファントムを追う。 すでに迷ってしまいそうな入り組んだバックステージの奥には、使われていない古い階段があり、階段は地下に続いている。 増築と改築を何度も重ねたシアターの、迷路のような地下に続く階段を駆け降り、僕は引き離されないように、ファントムの後を必死で追いかけた。 僕らの後を追って来る刑事らしき者の姿はない。地下の迷路で迷子になったんだろうか。 ファントムが非常口のドアを開けて錆びた螺旋階段(らせんかいだん)を今度は駆け上がり始めた。 お芝居、オペラ座の怪人の、荘厳(そうごん)でドラマティックな曲がバックステージにも響き、僕の耳を捕らえる。 僕は後を追いながら、ジャケットの内ポケットからスマホを取り出し、兄さんのスマホに電話をかけた。 留守電になる。 劇場なので当然電源を切っているのだ。しかし、何度も何度も電話をかけた。 兄さんが、やっと電話に出ると、「西にある使われてない非常階段を登れ!」と言って僕は電話を切った。 image=507002328.jpg
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加