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息が苦しい。足がもつれる。
僕は体力に自信がないから必死だ。
しかし僕の心は、はしゃいでいた。
この追いかけっこは、苦しくて、怖くて、楽しい!
こんなに楽しい事がここしばらくあっただろうか?
ファントムは軽々と階段を駆け上がり、次第に僕との距離を広げてゆく。
ファントム、屋上に逃げたって、逃げ場はないぞ! 日本語で言う、袋のネズミってやつだ。
何やら屋上から聞いた事もない騒音がしている。何の音だ?!
息を切らし、やっと屋上のドアに手をかけ、開くと、凄い風が吹いている。爆風と言ってもいい。
「!!」
ヘリコプターがホバリングしている所だった。
縄ばしごが下ろされ、ファントムがそれに掴まっていた。
ファントムの着けている衣装の赤いマントが風になびいている。
僕は全力で走り寄って、ジャケットの内ポケットに入れていた特注のナイフを取り出した。
2本忍ばせて持って来たのだ。
縄ばしごを掴んでいるファントムの両手に命中させれば落下するだろう。
僕は狙いを定める。そして、叫びながら思いきりナイフを投げた。
「うりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!」
当たれ!!
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