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信じられない事に、そのナイフの持ち手をファントムは瞬時に掴んで捕らえた。
「ウソっ?!」
ファントムは僕を見つめて、冷ややかな声で言った。
「お仕置きをしないといけないね……」
ヘリコプターはどんどん上昇してゆく。
もう、僕の力ではナイフを投げても届かないだろう。
「葵!!」
兄さんが後ろから走って来た。
「兄さん、ファントムの手か、縄ばしごを狙って銃を打て! 落下させるんだ!」
風の音に掻き消されないように僕は叫んだ。
「よしっ!」
兄さんが拳銃を構える。
すると僕がさっき投げたナイフを、ファントムが兄さんに向かって投げ返し、それが兄さんの太ももに突き刺さった。
「いてーーーーーーっ!!!!!」
兄さんは銃をあらぬ方向に1発撃ち、後ろにゴロンと倒れた。
「兄さん!!」
兄さんの手から僕は拳銃を取った。
ズシリと重い。
ファントムに視線を移し、銃口を向ける。もちろん拳銃なんて触った事はない。
震える手で狙いを定めていると、ファントムはジャケットの内ポケットから拳銃を出し、こちらに向けて1発撃った。
「ひっ!!」
身体が硬直する。僕の足元に弾丸が撃ち込まれたのだ。
僕が怯んでいる間にヘリコプターは拳銃で狙えないくらい高く飛んで行き、やがて遠くへ消えていった。
★★★
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