第1話 怪盗ファントム、現る!!

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信じられない事に、そのナイフの持ち手をファントムは瞬時に掴んで捕らえた。 「ウソっ?!」 ファントムは僕を見つめて、冷ややかな声で言った。 「お仕置きをしないといけないね……」 ヘリコプターはどんどん上昇してゆく。 もう、僕の力ではナイフを投げても届かないだろう。 「葵!!」 兄さんが後ろから走って来た。 「兄さん、ファントムの手か、縄ばしごを狙って銃を打て! 落下させるんだ!」 風の音に掻き消されないように僕は叫んだ。 「よしっ!」 兄さんが拳銃を構える。 すると僕がさっき投げたナイフを、ファントムが兄さんに向かって投げ返し、それが兄さんの太ももに突き刺さった。 「いてーーーーーーっ!!!!!」 兄さんは銃をあらぬ方向に1発撃ち、後ろにゴロンと倒れた。 「兄さん!!」 兄さんの手から僕は拳銃を取った。 ズシリと重い。 ファントムに視線を移し、銃口を向ける。もちろん拳銃なんて触った事はない。 震える手で狙いを定めていると、ファントムはジャケットの内ポケットから拳銃を出し、こちらに向けて1発撃った。 「ひっ!!」 身体が硬直する。僕の足元に弾丸が撃ち込まれたのだ。 僕が(ひる)んでいる間にヘリコプターは拳銃で狙えないくらい高く飛んで行き、やがて遠くへ消えていった。 ★★★
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