97人が本棚に入れています
本棚に追加
兄さんは命に別状はないが大事を取って入院した。
そして、僕は詳しい事情を話すよう警察署に呼ばれた。
話好きそうな刑事に、オペラ座の怪人役の役者はどうなったかと聞くと、シアターの地下倉庫でボンヤリしているのを警察の人間によって発見されたと教えてくれた。
シアターで見知らぬ男性に話しかけられ、話し込んでいる内に、自分の役者としての自信が全くなくなって途方に暮れてしまったのだそうだ。
見知らぬ男性と言うのは恐らくファントムだったのだろう。
ファントムの話術で心理的に操つられてしまったという事だろうか。
指輪はと言うと、安心な場所に保管されていたはずが、いつの間にか偽物にすり替えられていたそうだ。
★★★
家に帰って来ると、22時を過ぎていた。
玄関のドアを閉めると、僕は大きなため息をつく。
結局、1億円の指輪も奪われたし、ファントムにも逃げられた。
僕も兄さんもファントムに負けたんだ。おまけに兄さんはケガを負ってしまった。
僕のせいだ。
夕飯を食べる気にもならない。シャワーを浴びてとっとと寝よう。そう思い、僕はバスルームにトボトボと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!