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「僕は地獄耳なだけです。それに芸術が限られた人だけの高尚のものになったら興行が成り立たなくなって誰も見る事が出来なくなるじゃないですか」
「その話は今度ゆっくりしよう」
「今度?! ゆっくり?!」
「君があそこで出て来なければ、The Point of No Returnも舞台で歌ってみたかったね」
ファントムが歌いたかったと言うのは、劇中劇で、オペラ座の怪人とクリスティーヌが2人の愛を歌う曲だ。
僕はファントムが官能的な歌声で歌うのを想像して頬を熱くする。
「色気ダダ漏れでしょうね」
「ふふふ。さて、今度こそ、おいとまするとしようか」
ファントムは立ち上がった。
「あっ!」
僕はファントムの足元を見て声を出す。
「何だ?」
「土足禁止ですよ!」
「これは、すまなかったね」
ファントムはプッと笑った。
「じゃあ、床をなるべく汚さないよう、今日も窓から帰るとするか。」
ファントムが窓のあるこちらの方に近付いて来たので、掛け布団を肩まで上げ、僕は身構えた。
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