第2話 受難美少年

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関東地区の1次オーディションは都内の会場で行われた。 書類審査で100人に絞られた少年達の中に僕はいる。 よそ行きの服で来たという感じの少年達もいたが、僕はポケットに校章のワッペンが付いたジャケットにネクタイ、ズボンという学生服姿で来た。 1次オーディションは与えられた3分間で自己紹介をするという内容だ。 名前を呼ばれるまで順番を待つ控え室の中で、ふと気づくと、テレビ局のものらしきカメラで横顔を撮られていた。 僕はそちらに顔を向けてニッコリと笑い、女の子みたいに顔の近くでピースをしてみせた。 「お名前を教えて下さ~い。」 カメラの横にいた若い女性がマイクを向けて来た。 厚めの唇にベッタリと塗られた鮮やかなピンクの口紅だけが印象的だ。 「小林葵です」 「年齢はいくつですか~?」 「C学1年××歳です」 「どこから来たんですか~?」 「都内からです」 「視聴者の皆さんに一言お願いしま~す」 「頑張りますので、応援よろしくお願いします」 僕は首を少し傾げ、とっておきのカッコ良くて可愛いであろう笑顔をカメラにキメた。 ★★★
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