第2話 受難美少年

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僕は2次オーディションを通過し、最終オーディションが行われる都内のスタジオに向かった。 歴代優勝者で芸能活動をしている者達の歌やトークショーを観客を入れてした後に、10人の優勝候補者達がランウェイを歩いた後、持ち時間3分を貰って自由に自己アピールする事になっている。 テレビカメラも入る最終オーディションだったが、服はよそ行きの服もなく、かと言って、お金をかけて新調する気もなく、僕はまた学生服でスタジオに向かい、そのままステージに上がるつもりだ。 スタジオに入ろうとすると、スタッフだと言うサングラスをした男に声をかけられた。 中肉中背のスーツの男。髪は茶色がかっているが、根本は黒く、少しだらしなさを感じる容姿だ。 オーディションを行うスタジオが変更になったのだと言う。 「隣のビルの一番奥のスタジオに変更になりました」 「はい」 手にはめていた手袋を取りながら返事をする。 僕はその男に案内されて、隣のビルの1番奥のスタジオに向かった。 何だか人気がない。こんなものだろうか? 閉まっていたスタジオの扉を男が開ける。 不審に思い、中を覗き込んだその瞬間、僕は背中を突き飛ばされて転んだ。 「痛っ!」 スタジオの中は、スタジオと言うよりガランとした物置場みたいだった。 こんな場所でオーディションが行われる訳がない。騙されたのだ。
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