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「死んでないよな?」
そう言って背後の男が僕の身体を解放した。僕は床にドサッと倒れる。
「息はしてるよ。気を失ってるだけだ。顔をやれって頼まれてたけど、どうする?」
僕の顔を素手で殴った男が言う。
「これで、いいんじゃねぇ? もうコンテストには出られないだろ」
サングラスの男が答えた。
「そうだな」
背後の男が言うと、ガサゴソと何かを漁る様子の後、3人の足音が遠くなって消えて行った。
★★★
10分ほどすると誰かが僕の倒れているスタジオに近付いて来る足音がした。聞いた事のある足音だ。
「どうした?!」
その声は怪盗ファントムの声だった。
靴音が急速に近付いてくる。
「ファントム……???」
「大丈夫か?!」
「なんでここに……?」
ファントムと、こんな形で再会するなんて。
「殴られたのか? こめかみを切っているな。これで押さえて止血しろ。無理に立たない方がいい」
ファントムから、恐らくハンカチが僕の手に渡された。
「立てるけど、血が目に入って見えないんです」
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