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キッチンで夕食の用意をしていると、家に帰ってきた兄さんが言った。
「怪盗ファントムの情報を調べてくれ」
「怪盗ファントムの?」
僕は、作っていたビーフシチューを火にかけながら聞き返す。
兄さんは22歳、名前はヒカル。警察庁のキャリアで階級は警部補。警察大学校を出たばかりだ。
現在は見習い期間として警視庁に9ヶ月間の予定で出向中なのだが、度々世間を騒がせている怪盗ファントムと呼ばれる大泥棒を現場で追う事になったのだと言う。
兄さんは軽い感じで、こう言った。
「今回も頼むよ! お前ならパソコンでファントムの情報を調べられるだろ! なっ!」
「兄さん、僕は検索エンジンじゃないよ」
兄さんは僕の能力を正しく理解しているのか、いないのかイマイチ解らない。
ハッカーとは公開しないシステムの内部へ不当に自分の技術でもぐり込み、情報を覗いたり、盗んだり、イタズラをしたり、システムを麻痺させたりする者の事だ。情報を検索する者の事ではない。
まぁ、警察官の兄さんには検索エンジンと思われていた方が都合はいいんだろうけれど。
「この前だって、葵のくれた情報で事件が解決したじゃないか。ファントムを絶対捕まえたいんだ! 協力してくれ!」
軽い男に見えて、熱いのが兄さんだ。
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