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午後七時になると、サチが出勤して来た。
彼女には予め電話で知らせておいたから、カオルを見ても驚かなかった。いや、むしろ喜んで飛び上がった。
「うっそお! ええ―、何でこんなイケメン、しかもメガネ―? ちょっとアキラさん、山谷くんクビにして、カオルくんにずっと働いてもらいましょーよー!」
「いや、それは無理。コイツ、ホントに今日だけの応援だから」
「えー、そうなんだ。めーっちゃ残念!」
サチは少し厚めの唇を尖らせた。
彼女は決して美人ではないが、表情豊かな二重の目と大きな口に茶目っ気があり、客から親近感を持たれやすい。頭も良いし気も利くから、男性客だけでなく同性にもウケが良かった。
だが一つだけヤバいところがある。それは何かあると、すぐ自分のブログに書き込むことだ。
何をかこうが彼女の自由ではあるけれど、何でもネタにして良いと言う訳にも行かない。特に個人情報は気を使うところだ。
「ちょ、カオルくん。写メして良い? ブログにのっけて良い?」
ほら来た。案の定、もうスマホ構えてやがる。
「え、それはちょっと……」
カオルは困った顔で俺を見た。当たり前だ。DJサイがバーでバイトなんて、ヤツを知ってる連中の間では良いネタになる。
音以外の事で話題になるのは、ヤツもきっと不本意だろう。
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