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「まあな。基本的に性格良いし、仕事熱心だし。そしてあの体育会系というか、そういう元気なノリで懐かれたら、あんま無下に出来ねえしよ」
「……女には優しいもんな、アンタ」
「おいおい、ナニ苛ついてんだよ」
「はあ? 誰がだよ。まったくフツーだし」
ふいとそっぽを向いて、あからさまに膨れている。ただの仕事上の関係にまで反応するなんて、本当に可愛いヤツだ。
サチが出勤してなかったら、今ここで抱き締めてキスしたい。でもそれはマズイ。俺達の関係を、彼女に知られるわけには行かない。
抱き締める代わりに、黒いピアスが光る左耳へ唇を寄せた。
「本当の俺を一番良く知ってるのは、お前だけだ」
「……」
「違うか?」
「……違わない」
「だろ? だったら機嫌直せよ。仕事絡みの些細な事なんだし、バイト代もはずむから、よ」
離れる間際、わざと吐息を残す。
カオルはふるりと肩を震わせ、惜しむように俺を見つめた。
「……現金即払いで、頼む」
「しっかりしてんなァ」
「俺が貧乏なの、アンタが一番良く知ってるだろ?」
上目遣いの瞳がうっすら濡れ、頬が赤らんでいる。会話の内容に反してセクシーな表情だと思った矢先、サチの声がした。
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