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「ちょっとぉ、二人で内緒話ですか? なーんかイヤラしいんだあ」
目をやると、カオルと同じユニフォームに着替えたサチがニヤニヤしながら近づいて来る。人にイヤラしいと言いつつも、自分もかなりイヤラしい笑みを浮かべているのに気が付いていない。
「だろ? バイト代の話だからな。金の話はイヤラしいに決まってんだろ」
「あ、そりゃあそうですね。カオルくん、アキラさんにたっくさん払って貰ってね! で、ついでに私もよろしくお願いしまっす」
俺の切り返しに、サチは大袈裟な敬礼で応えた。
彼女はこういう軽くて害のないやり取りが上手で、多少雰囲気が悪い場面でも客から笑いを引き出してくれる。おそらくカオルとも上手くやってくれるだろう。
「大入りが出るよう祈っとけよ。じゃ、俺はキッチン入ってるから、開店準備して、時間になったら開けてくれ」
「はい、今日もよろしくお願いしまーす!」
「よろしくお願いします」
いつもの挨拶をし、ホールからキッチンへ下がった。
キッチンは二カ所出入口があり、それぞれカウンターとホールに通じている。だからここで作業しながらでも、ホールの様子は大体把握出来るってわけだ。
サービスのチャームで出す夏野菜のマリネや他のフードの下ごしらえをしていると、二人の会話が聞こえて来た。
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