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「カオルくんは、こういうとことか居酒屋の類で働いたことある?」
「ない。でも、飲み屋とかバーには良く行くから、雰囲気は慣れてるかも」
「じゃあ、大丈夫そうだね。判らない事があったら何でも訊いてね。一つ二百円で回答するから」
「えー金取んの? しかも二百円って、何で二百円?」
「高い? じゃー大負けに負けて、タダで教えてあげる!」
「マジ? 良かった」
「良かったでしょー私良い人で」
「お、自分で良い人って言っちゃうし」
「そうだよーだってホントだもん」
下らないやり取りと笑い声が響く。それなりに上手くやっているようだ。
この調子なら何とか今夜は乗り切れそうだと思うと、目の前が少し明るくなった気がした。
「じゃあそろそろ、開店しまーす!」
午後八時になり、サチがドアを開け、外看板を灯した。
うちの店は落ち着いたオールドアメリカン調の内装で、席数はカウンター七席に四人掛けのボックス(テーブル)が、通常は七つある。
店の最奥にはインテリアを兼ねてピンボールやダ―ツゲーム、ビリヤード台を置いていて、客層は二十代後半から四十代くらいのオトナが多い。
外看板も飾り気がなく、白く塗られた中央に、アルファベットで「BAR STRIPPED 2ND」と書かれているだけ。だがそれがかえって、ビカビカ光りまくるネオンの中で逆に映え、見つけやすいという声もある。
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