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今夜の一番客は、開店五分後に現れた。
二度ほど来店したことのある、男女合わせて五人のグループだ。手には祭で配布されている、神宮のゆるキャラが描かれたうちわがあった。
ちなみにゆるキャラは宮司の孫の考案だが、紫のアメーバのような微妙で不気味な物体で、評判はかなり悪い。
祭の最中、ウチを含め、この界隈の店のほとんどが、うちわを持った来店客に何らかの特典を用意している。ウチの場合はチャームのサービスと、会計金額の五パーセントオフだ。
「いらっしゃいませ。ストリップへようこそ!」
まずサチがドリンクのオーダーを取りに行き、一旦戻って来て俺に内容を伝えてから、人数分のチャームを再び席へ運ぶ。
カオルは彼女の動きを見ながら、カウンターの端でマリネをひたすら盛り付けていた。
その間に二組目、三組目が来店した。不思議な事に、客っていうもんは入り始めると続くものだ。
ぞろぞろ現れる客で、二十分もしないうちに席が八割埋まり、さすがにカオルをホールへ出した。
忙しく立ち回るサチの指示で、カオルが女性二人組にオーダーを取りに行った。
女性は二人とも二十代後半から三十代前半で、一人は肩より短い黒髪のボブ、もう一人は耳朶が見えるくらいの、ブラウンのふんわりしたショートカットだ。
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