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一気に疲れが吹き出して、体が倍以上重くなった。思わずよろめいてソファに座り込むと、カオルが岩戸から姿を見せた。
もしかして、倒れた俺を心配してくれたのか――そう一瞬喜んだが、カオルは俺の前に仁王立ちして、再び俺の胸倉を掴んだ。
うっ、今度は何を怒ってんだよ。
「アキラ!」
「お、おう」
「それから……それからっ。裸エプロン敬語プレイはコッチが終わってから付き合ってやるから、色々用意して待っとけボケが!」
「へ? うぐっ」
意外な言葉にビックリしてる間に、カオルはガチン、と前歯がぶつかるような、乱暴なキスを寄越した。
上顎にじんわりと痛みがひろがり、ちょっと涙が滲む。ヤツも顔をしかめつつ、荒っぽく俺から手を放し、また岩戸へ戻って行った。
「痛って……」
何だ、裸エプロン敬語プレイって。ああ、俺が仕事中に言ったヤツか。
「つうか、ナニ顔真っ赤にしてんだよ」
軽い冗談のつもりだったのに、カオルは覚えていたのだと思うと、何だか微笑ましくなった。
アイツは俺が望めば、それがかなりマニアックな要望でも受け入れるつもりなんだろう。言いかえれば、それだけアイツの許容範囲が広いということだ。
まったく、この可愛い変態め。
岩戸からガサガサと、何かを探す気配が伝わって来た。続けて複数のスイッチが入れられ、機械に内蔵されたモーターが回り、キーボードが叩かれる。
どうやら本格的に作業を始めたようだ。
こうなったら、カオルはしばらく出て来ない。待っても無駄ってヤツだ。
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