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コイツにそう呼ばれていた頃が、ふと頭を過る。まだ親しくなる前の、客とバーテンダーの関係だった頃だ。
当時のカオルは派手な金髪で、普通に女と付き合っていた。俺はそんなコイツの前で気の良い店員を装いながら、いつもこっそりプチ視姦してたっけ。懐かしい。
回想は無駄に繋がり、やがてコイツを初めて自宅へお持ち帰りした時に至る。
アレは本当に美味しい夜だったと思い返しながら、店にユニフォームを取りに行き、一式携えて戻ると、カオルが怪訝な視線を寄越した。
「……ナニ妄想してんだよ」
「へ?」
「無駄にニヤニヤして。何かおかしい事言ったか、俺?」
お、カンが鋭くなったな。
「いや、全然。むしろたまには敬語プレイも良いなって……」
「黙れ。つうか、何で人が真剣に仕事の事考えてる時に、そういう方向に行っちまうんだよ? アホじゃねえのマジに」
「うっ、酷え。ただの冗談だろ、冗談。つうかこのくれえ、適当に笑顔であしらってくれよ、仕事中は」
「へいへい。わっかりました、アキラさん」
カオルは憮然としながらユニフォームに着替え、ぎこちない様子で蝶ネクタイを締めた。
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