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「蝶ネクタイって、ぶっちゃけ初めてかも。おかしくねえ?」
「いいや、全然」
「ホントに?」
「ああ。お前、ナニ着ても似合うからよ」
「そんなことねえし……でも一応、ありがと」
カオルは少し照れたように、いそいそとダテメガネをかけた。飴色のプラスチックフレームが、派手な顔立ちに落ち着いた印象を加える。
ちょっとしたアイテムなのに、効果はなかなかのものだ。
「メガネ、あった方が良い?」
「うん、そうだな」
「やっぱり。じゃ、これで行く」
黒のスラックスに、白いウイングカラーのシャツと蝶ネクタイ、そして黒のメンズ用ロングエプロン。
おそらく初めてのユニフォームなのに、ちゃんと着こなしている。臨時のホールスタッフとしては上出来だ。
時間を確認すると午後六時過ぎで、そろそろ開店準備にとりかかる頃合いでもある。俺もクリーニングから戻って来た自分のシャツを袋から出し、着替えることにした。
ちなみに俺はロングエプロンではなく、ベストにソムリエエプロンを着けている。店長格のバーテンダーはベストを着用しろというオーナーの指示だ。
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