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隣の男が青い顔をしたのは、それから三杯目の時だった。
俺の前には、綺麗に空のグラスが置かれているのに対し、そいつが漸う置いたグラスにはまだ中身が半分ほど残っていた。
「ちょっと、翔さん。もう無理しない方がいいですよ」
慎さんがそのグラスを遠ざけて、水のグラスを差し出した。
いよっしゃ!
と、ひそかにカウンターの下でガッツポーズをする。
互いに言葉はなくとも目と目の会話で始まった意地の張り合いは、どうやら俺の勝利で片付きそうだ。
つってもやばかった。
俺の方も多分あともう一杯いかれれば、無理だった。
そう素直に認めるくらいに、視界はグラグラ揺れていて頭も瞼も異様に重かった。
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