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慎さんの声だ、と気付いた時には足がそちらを向いていた。
「そんなこと言わずにさ。いいだろ」
「無理ですよ、店もあるし」
猶も聞こえてくる会話は、慎さんを困らせているもので、いらっと来たまま路地に足を踏みいれる。
そこには、あの男に迫られて壁際まで追い詰められた慎さんの姿があり、苛々は最高潮に達した。
いいだろ、ってなんだなにが「イイ」んだ。
頭に血が上ったまま近寄る俺に慎さんは気付いたが、男は俺には気づかない。
「経験してみないとわかんねーだろ。いいから俺のとこに来いよ、一度でいいから」
「いい加減にしろよこのホモが!」
経験ってなんじゃあ!
肩を掴んで思い切り引きはがすと、バランスを崩した男はその場に尻もちをついた。
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