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じりじりといった感じで一向に縮まらない距離をどう詰めようかと考えながらの攻防戦は、突如終わりを迎える。
「ぶはっ」と盛大に吹き出す音が聞こえて、今まで見向きもしなかったもう一方のテーブルを見た。
「お前ら二人いい加減にしろよ。面白すぎるだろ」
ソファとテーブルの影からむくりと身体を起こしたのは、もう一人のバーテンダーで店主の佑さんだった。
「佑さん、泊まってたの?」
と、慎さんがあからさまにほっとして頬の緊張を緩めた。
「そりゃ、こいつここに寝かせたまま店放置できないだろうが」
「あ、やべ。聞かれちゃった恥ずかしいな」
今の攻防戦もその前の勢い任せの事故みたいな告白も、全部この人の真ん前でやってたことになる。
さすがに気恥ずかしくて照れ笑いで誤魔化そうとしたら慎さんに鬼の形相で睨まれた。
自分を好きだと言う人間にもうちょい優しくしたって罰は当たらないと思うのは俺だけだろうか。
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