きみは番犬

14/26
前へ
/26ページ
次へ
僕がそう言うと、彼はきょとんとした顔をした。 まるで、僕の言った意味がわからないようだった。 「なんでですか?」 「いや、なんでって。普通、気分悪いでしょう」 「俺としては、慎さんをもっと知るのに都合がいいし。あんなに心配性の佑さんが番犬に任命するくらいには、信用されてるのかと思って」 「……」 嬉しそうに破顔する、その邪気の無さに返す言葉が見つからない。 がたんごとん、と電車が揺れる。 降車駅が近づいて、車掌のアナウンスが流れた。 「ここです。降りますよ」 とん、と腕を叩いて一緒に降りるように促すと、やはり彼は嬉しそうだった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

421人が本棚に入れています
本棚に追加