きみは番犬

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駅を降りると、目的地はすぐ近くだ。 こじんまりとしたビルの二階のフロアを貸し切っていて、下から眺めると窓に空手道場の看板が掲げてあるのが見える。 「え、慎さん空手なんかやるんすか」 「まあ、ちょっとだけ。護身術程度に。昔っからこんな形ですから色々とありまして」 「かっけえ……ってか、空手やってんなら番犬なんて必要ないんじゃ」 言いながら、陽介さんがなぜかするすると自分の鳩尾辺りを撫でていた。 「そうですね。辞めますか?」 にや、と口角を上げて笑うとぶるぶると顔を横に振った。 「辞めませんよ、絶対」 ふん、と意気込んで鼻息を鳴らした彼に、ほんの少しほっとしたのはなぜなのか自分でもよくわからない。
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