きみは番犬

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「それじゃ、ここまでついてきてくださってありがとうございました」 ビルの入り口手前で、深々と頭を下げた。 この中まで、着いて来られるわけにはいかないのだ。 「えっ? 待ちますよ俺。ってか見学してみたいなって」 「見学禁止です、すみません。それに貴方、着替えた方がいいんじゃないですか。昨日のままでしょう」 指摘すると、彼は俯いて少しよれたワイシャツの襟元を指で引っ張って匂いを嗅ぐような仕草をする。 「終わるまで一時間以上かかりますし、お待たせするのも悪いですから」 「あっ、ちょっ」 「上がって来たら怒りますよ!」 まだ何か言いたげな陽介さんを置き去りにして、階段を駆け上がる。 踊り場で一度立ち止まり、後ろの様子を暫くうかがってみたけれど、追ってくるような様子はなくてほっと溜息を落とした。
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