きみは番犬

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店を出て石畳の通りを端まで歩くと、近くの駅から電車に乗る。 夏の暑さも通り過ぎ過ごしやすい気候に加え、今年は晴天の爽やかな日和が続いていた。 この男さえいなければ爽やかな散歩であったのに、結局ずっと後ろに張り付いたままでとうとう切符売場まで着いてきた。 「どこまでついてくるんですか」 「えっ、どこまで行くんですか」 券売機に小銭を入れながら背後に向かって問いかけると、そう尋ね返された。 質問に質問で返すな。 「僕は行く宛がありますので、貴方はどうぞお帰りください。店の掃除、ありがとうございました」 背中を向けたままそう言って、出てきた切符を手に改札へ向かう。 彼も切符を買わなければ行けないだろうからその隙に行ってしまえと思ったのに、そのまま離れることなく着いて来た。
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