きみは番犬

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かしゃん、と音をさせて改札を抜けるとすぐに振り向いた。 どうするつもりだと思ったら、彼はパスケースを翳してさっさと僕に続いて改札を抜けてくる。 僕の非難の目に気がついて、申し訳なさそうに眉尻を下げた。 「あ、俺はチャージしてあるんで」 くそ、ここで撒けると思ったのに。 そういうICカードがあるのは当然知ってるけども、僕には余り馴染みがない。 週に1度電車に乗るくらいだから、今まで考えたことがなかった。 「だから、着いてこないでくださいって!」 「いや、だって佑さんにも頼まれてるし」 「ほんっと真に受けすぎですよ!」 ホームまでの階段を早足で駆け上がっても、彼は難なく着いてくる。 当然だ、コンパスの長さが全然違う。
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