番犬の役目

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パン好き、という情報を得て、パスタのサイドに付いて来たパンが二つ乗った小皿をそっと慎さんの方へ差し出してみた。 「いいですよ、それは陽介さんの」 「でもこれ焼き立てですよ」 とん、と丸いフランスパンの表面を指で叩いて見せると、仄かに指先があったかい。 焼き立てパンがついて来る、とメニューにも確かに書いてあった。 ぴく、と慎さんの眉が反応した。 ちらりとパンの小皿を一瞥すると、少しだけこちらへ身体を乗り出した。 「……ほかほかですか」 「ほかほかです」 いかんクソ可愛い! 口元がだらしなく緩んでしまいそうで、きゅっと唇の端に力を入れた。
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