番犬の役目

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慎さんは、姿勢がいい。 食べる時もなんか手の使い方が綺麗だし、俺なんかオシボリで手を拭いたら適当にしか折りたたまないけど慎さんはきっちり長方形に折りたたんで、オシボリが入っていた半透明のビニールと一緒に重ねて置いていた。 自分の行儀がちょっと恥ずかしくなって、慎さんがそっぽを向いてる隙にこそこそとちゃんとたたみ直してみたり。 店でカウンターに立ってる時も、どことなく全ての仕草が人の目を引く。 シェーカー振ってる時なんかめちゃくちゃかっこいいし綺麗だし。 でも目の前で、若干無表情を装いながらも明らかに目を輝かせてパンを食べてる姿は可愛い。 一目ぼれしたのだと気づいてから、どうしようもなく可愛いとこばっかり見せられて、週明け出社したら浩平になんて言おうか考える。 「……僕の顔に何かついてますか」 さっきまで嬉しそうだったのが今度は三白眼で此方を睨んだ。 どんな顔されてもムズムズする、なんて経験初めてだ。 「いえ別に。綺麗です。あ、そうだ。慎さん携帯教えてください」 「脈絡ない人ですね。あ、そういえば僕も聞こうと思ってたんです。浩平さんの携帯を教えていただけたら嬉しいんですが」 は?! なんでそこで浩平じゃ!
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