番犬の役目

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「……なんだよ美味しい思いって」 訝しく眉根を寄せる佑さんに、ふふんと得意顔で鼻を鳴らす。 「電車の中で結構混んでて、俺がいないと慎さん押されて大変だったかもしれないし」 実際には邪魔だと言わんばかりに睨まれた挙句、気持ち悪いと胸を殴られたが。 「パン好きで焼き立てホカホカに弱いってわかったし、携帯番号も教えてもらえたし」 携帯はほんとは浩平の次いでだが、そんなことよりもほかほか発言はマジで可愛かった……! 今思い出しても顔がにやけてくるのが止められない。 「……お前、哀れなやつだな」 それのどこが美味しいんだよ、と佑さんが頬を引き攣らせていたが、その中に微かに安堵が混じっているのを確かに見た。 ような、気がする。
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