番犬の役目

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頭の天辺を握られたまま、佑さんがカウンター越しに此方へ身体を乗り出してくる。 頭上にある手に力が込められて、無理やり左斜め方向へ顔を向けられた。 まんま左、ではなく斜め左。 すると視界の左端に、慎さんと男性客の姿が映る。 来た時からずっと、慎さんが話し相手をしているスーツの男性客だ。 「いいか番犬、威嚇するのは俺じゃねえ。あっちだ」 「え……」 佑さんに小さく抑えた声でそう言われ、漸く気が付く。 30代くらいの、男性客……奴が、奴がそうなのか。 「ったく。お前、今の調子で慎に好意持ってそうなヤツ片っ端に威嚇して行くつもりじゃねえだろうな」 ぱっと頭を掴んでいた手が離れていくと、呆れた顔で見下ろされる。 「ってことはやっぱり佑さんも」 「違うわ! たとえ話だろうが!」
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