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なんだ?と首を傾げる。
だが慎さんも此方を見たことに気が付いて、俺はこれ幸いと片手を上げた。
「慎さん」
客と話してるとこ、急に声かけんのもどうかと思ったけど。
目が合ったんだから、許されるだろう。
相変わらず接客モードの固い微笑みだが、それでも笑ってくれたことに気を良くしていると、慎さんが男に軽く会釈をして此方に近づくような素振りを見せた。
だがすぐに足が止まって、また男を振り向く。
男の手が慎さんの腕を、捉えたのだ。
引き留めた、ただそれだけなのはわかるけど。
その瞬間、いらっと了見の狭い感情が湧いて出た。
慎さんがもう一度言葉を交わし、一時離れることを告げたような素振りだった。
男の手は、掴んでいた肘の辺りから手首、指、と名残惜しむように滑り。
まるで口づけでも落とすように、その掴んだ指を掲げた。
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